【考察】なぜ道場にあえて通うのか(学生編)

武術はどこで習うべき?(学生の場合)

趣味の楽しみ方は様々あります。

サークル,同好会や倶楽部などの大人でも趣味に取り組み易い環境が幾つも存在しており,インターネットで検索すれば自分に合った場所をすぐに見つけられるようになりました。

学生であれば学校の部活,サークル,同好会など(以降まとめて部活と書きます)は非常に便利です。

見知った仲間と同じ趣味に没頭し,それを学生生活の醍醐味とする人も少なくありません。

とはいえ学生が学校外で趣味に励むことに何ら問題は無い訳ですから,例えば武術を練習してみたいなどと思った時に学校の部活と地元の道場,どちらに行こうか迷うこともあるはずです。

迷った方には是非とも両方体験してから最終判断をして頂きたいのですが,短い体験稽古の中で全容をつかむのも難しいでしょう。

学校の部活については各学校様々な特色がある上,既に所属している先輩から詳しく聞くことも可能ですので,本記事では道場に通う利点を一般的な部活と比較しながらまとめてみたいと思います。

道場の利点

継続して稽古ができる

道場と部活が異なる点の最たるものはその稽古場所です。

部活が基本的に学校で稽古を行うのに対し,道場では当たり前ですが道場で稽古を行います。

どちらも通うものであるという点では同じですが,長い目で見ると大きな違いあるのです。

学校というものが基本的に在籍年数を限定しているのに対し,道場に所属する時間は制限されません

つまり,武術という果てしない修行に身を捧げるのであれば,圧倒的に道場の方が有利であることが分かります。

また単に健康維持の為武術を習いたい人も,卒業しなくて済む道場の方が効果的なはずです。

特に学生の間は受験をはじめとする様々なイベントがあり運動不足になる人も少なくないですが,道場通いを私生活の一部としてしまえば安定して体を動かす機会を得られるでしょう。

かく言う筆者も受験生の時は道場に大変お世話になりました。

人間の体は動くことを前提に設計されていますから,長時間机に向かっているより適度の運動を挟んだ方が効率良く勉強できたのです。

 

ここで述べた道場に長くいられるという利点は,他も効果ももたらします。

長く在籍している人が多いので,稽古の質が安定するのです。

質の安定

道場にいる先生や師範,師範代や有段者は基本長時間稽古を続けてきた方々であり,指導経験も豊富です。

また長時間在籍されている方々が急にまとめていなくなることは基本ありませんので,稽古の質は安定します。

質の良し悪しは道場によって勿論異なりますが,道場が昔からそこにあるのであれば評判も実態に近いものになるはずです。

部活はどうしても生徒の入れ替わりが激しいことから,毎年稽古の質が同じである補償がありません。

顧問の先生にも任期があるでしょうし,また運営方針を決めるのも学業が本分である学校となります。

無関係の人による影響を稽古内容から排除することを望むのであれば,通うべきは武術家ばかりが在籍する道場だと言えるでしょう。

またその観点でいうのであれば,間借りで稽古場所を確保している場合は常に他者の影響を受けますので道場の中でも常設のものを選ぶべきです。

部活との比較に話を戻しますと,部活の顧問になる方が質の高い稽古内容を必ず提供できるとも限らない問題があります。

教員の過労問題は現在深刻であり,最優先事項である授業の質を安定させねばいけない以上,部活で十分な指導が出来ない教員も少なくありません。

顧問の先生の労働時間を決めるのも学校ですので,例え顧問が優れた武術家だったとしても理想通りの部活動を提供することは難しいと言えます。

対称的に,道場は稽古の質が悪いと潰れてしまいます。

部活のように学校が助けるようなことも無いので,現在存続している道場はどれも一定の質を補償されていると考えられます。

とはいえ一般的な質と個人の好みは別ですから,結局は見学して自分に合った場所を探すほかありません。

その時は是非,見学時の質を安定して提供しやすいのは歴史ある道場の方であることも考慮した上で選択してみて下さい。

 

以上では質の安定を述べましたが,その質にも根本的な違いが部活と道場で存在します。

長期間在籍できる道場には,年齢などが異なる様々な方がいるからです。

多様な在籍者

歳の近い相手にしか通用しないものは武術と言えません。

世の中には様々な人が存在し,体格や知識,経験の違いは武術にも影響を与えます。

特に経験の有無は武術において重大な要素であり,稽古した相手の豊富さは強さに直結します。

在籍できる人という括りで見れば部活より道場の方が圧倒的に多岐多様な人材に恵まれているはずですので,経験を豊かにしたい人は道場に行ってみてください。

勿論世の中には様々な道場があり方針はそれぞれ異なりますから,一概に道場の方が沢山の人に出会えるとも限りません。

しかし殆どの道場は道場内での交流を盛んに行います。

季節のイベント等で年長者や入門して間もない人の話を聞いて,色々な価値観に触れることは武術だけでなく人生を豊かにしてくれます。

近年のインターネットは個人の嗜好に偏った情報を提供しますので,実際に自分の目や耳で情報を入手することを積極的にしなければなりません。

様々な方がどのように世界を見ているのか知ることの出来る道場は情報収集の場として優れていると言えるでしょう。

当然部活も情報収集の場として利用できますから,今の自分に足りない情報源を検討して部活か道場かを選んでも良いかもしれません。

まずは見学を

以上では道場に通う利点を部活と比較して述べました。

当然部活にも道場には無い利点があり,筆者である私はどちらも可能であれば参加するべきだと考えています。

部活の仲間というものは学校の中でも特別な位置づけですので,学校での交流を生涯大切にしたい方は何らかの部活には是非所属するべきでしょう。

また学校外での趣味活動は武術だけではありません。

部活で武術を習い学校外では他ジャンルのサークル,同好会やクラブに通うという選択肢もあります。

本記事で述べた道場の利点はあくまで一般の話であり,場合によっては近所の道場より学校の部活の方が良い稽古を出来る方もいるはずです。

結局は自分の目で確かめる他ありませんので,是非積極的に足を運んでみて下さい。

読者の皆様に素晴らしい出会いがあることを祈っています。

 

追記

本記事は部活か道場かという学生向けの比較を行いました。

一方で道場が提供する価値は学生のみを対象したものではありません。

次回の記事では話題の範囲を一般の方々に広げ,道場に通うことで得られるものについて述べていきたいと思います。

どうぞお楽しみに!